8.研究施設の現状と将来計画
共同利用設備を充実させ,大学等の共同利用研究者の研究支援を行うことが大学共同利用機関の主要な役目のひと つである。1975年の研究所発足当初から装置開発室と機器センターを設置し,1976年に化学試料室,1977年に 極低温センターを設置した。さらに1979年には電子計算機センターに大型計算機を導入し,1983年から極端紫外 光実験施設(U V S OR 施設)で放射光源装置が運転を開始した。これらの施設では単に設備を設置するだけではなく, 共同利用支援業務を滞りなく行うために技術職員を充実させた。また,高度な研究を進めるためには研究開発が不可 欠であり,研究職員も配置した。
流動性の高い分子科学研究所の場合,着任後の研究立ち上げスピードの速さが重要である。また,各研究グループ サイズが小さいことも補う必要がある。このような観点でも施設を充実させることが重要である。それによって,転 出後もこれらの施設の共同利用によって研究のアクティビティを維持することが可能である。研究者が開発した優れ た装置が転出後,共同利用設備として施設の管理となって,さらに広く共同利用されるケースもある。このように, 研究所として見た場合,施設の充実は研究職員が流動していくシステムそのものを支援することになる。従って,施 設の継続的な運営が重要であり,毎年,所全体に定員削減,人件費削減の要請があっても施設の技術職員については 手を付けず技術の向上に努め,絶えず技術レベルの高い人材を確保するようにした。技術職員が研究所外に出かけそ の高い技術力で研究支援するなどの技術交流を可能とした。さらに長期戦略が必要な施設には教授を置くことで,現 在は,施設所属の研究職員であっても流動性を保てる方向になっている。
現在,極端紫外光研究施設(U V S OR 施設),計算科学研究センター(組織的には岡崎共通研究施設のひとつ)が大 型設備を有し,計画的に高度化,更新を行うことで世界的にトップクラスの共同利用を実施している。国内外の超大 型の放射光施設やスーパーコンピュータ拠点との連携を図りつつ,差別化・役割分担を行い,機動性を活かした特徴 ある共同利用が進んでいる。分子制御レーザー開発研究センター(1997年設置),分子スケールナノサイエンスセン ター(2002年設置),機器センター(2007年に旧機器センター,旧極低温センター,旧化学試料室の機能を再構築 して設置)は本来の共同利用支援業務を行う一方で,それぞれ最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点事 業,ナノテクノロジーネットワーク事業,大学連携研究設備ネットワーク事業をそれぞれ受託し,特定分野の重点的 な強化,大学等の研究を支えるシステム作りを行ってきた。また,装置開発室は高度な特殊装置・コンポーネント開 発にその高い技術力を活かすべく,研究所外からの依頼に対応することで共同利用施設としての役目を果たしている。 巻頭にも述べたように,2013年4月から,分子スケールナノサイエンスセンターを改組し新たに「協奏分子システ ム研究センター」を発足させた。
(大峯 巖)
8-1 極端紫外光研究施設(UV S O R )
U V S O R 施設は2003年の光源加速器高度化(低エミッタンス化,直線部増強)とそれに引き続くアンジュレータ の増設,トップアップ運転(一定ビーム強度運転)導入により,1. G eV 以下の低エネルギーシンクロトロン光源とし ては世界的にも最高水準の高性能光源となった。さらに,光源加速器で唯一建設来手つかずの装置である偏向電磁石 をビーム収束作用を持つ複合機能型に交換することで,電子ビームエミッタンスを現在の 27.nm-rad から 15.nm-rad 程 度まで下げる改造を2012年春に行った。この改造に合わせて,アンジュレータ1台が増設され,周長 50.m の小型光 源に合計6台のアンジュレータが稼働することとなった。改造後,加速器の立ち上げ調整は概ね順調に進み利用実験 も予定通り再開できた。現在,運転の安定性の改善に取り組んでいる。
ビームラインはスクラップアンドビルトにより数を絞り込み,競争力のあるビームラインを中心に重点的に整備を 進めており,現在は13本が稼働しており,2本が立上調整中である。このうち2本の偏光可変型アンジュレータビー ムラインは世界的にも最高水準の性能を誇り,固体の光電子分光による研究に威力を発揮している。また,2本の真 空封止型アンジュレータビームラインは気体や液体の特徴ある分光研究に利用されている。今年度建設が完了し立上 調整が進んでいる軟X線顕微分光ビームラインは,国内では初めての装置であり,2013年度より供用開始となる。
新しい光源技術の開発として,レーザーと電子ビームを用いた光発生とその利用法に関する研究を,文部科学省の 受託研究として進めており,装置の整備が順調に進んでいる。現在,コヒーレントなテラヘルツ光・真空紫外光の試 験利用開始に向けて準備を進めている。
光源加速器の高度化は2012年度の改造で一段落し,その後はより高い光源安定性の実現へ向けた改良や新しい技 術の導入へ重心を移す。また,老朽化の進んでいる一部のビームラインについては,整理統合の可能性も排除せず更新・ 高度化の検討を進め,段階的に実施する。2013年度には固体光電子分光ビームラインのうち一本について,アンジュ レータや分光器,末端の実験装置も含む高度化を行うことが決定した。
上記のように既存設備の性能を世界最高水準に維持し高度な利用研究を推進しつつ,次期計画の具体化に向けた検 討を進める。
i). 1.5–2.5GeV 級新第3世代リング ii). 1GeV 級超高輝度リング
iii). ライナックによる軟X線自由電子レーザー iv). 小型エネルギー回収型ライナック
など様々な可能性が考えられるが,需要,予算,敷地,加速器技術の進展,他施設の動向なども考慮しつつ,計画を 練り,最適なものを選択する必要がある。i ) は比較的低エネルギーで汎用性の高い高輝度光源の実現を目指すもので あり,S P ri ng -8 では十分に対応しきれない V U V軟X線領域での高輝度光源を実現することで,我が国では S P ri ng -8 以外に真に第3世代光源と呼べる光源がない状況を打破しようとするものである。i i ) は汎用性よりも光源性能をより 重視し V U V 領域での超高輝度光源を実現しようとするものである。i i i ) は高輝度ライナックによる軟X線領域でのシ ングルパス型自由電子レーザーの実現を目指すものである。リング型光源と相補的な光源となるはずである。i v ) は リング型光源の限界を打ち破る光源性能を実現し,且つ,リング型光源の汎用性も有する施設の実現を目指すもので ある。これらのうち i i i ) については,既存加速器を運用しつつ整備を進めることができる可能性があること,現在進 めているレーザーと電子ビームを用いた光発生技術を活かせる可能性があること,などの利点もあり,実現可能性に ついて技術的検討を進めている。
8-2 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構・分子科学研究所・分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目 的として「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の 開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに, ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下 で共同研究等を推進することを目的とする」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナノサイエンス研究を行う」 機能と,「ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理と共同研究の推進」という機能が要求されている。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエン スセンターと(新)機器センターに分かれた。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置類およびそれ らの装置の責任者であった技術職員は機器センターに所属替えとなった。平成19年度から,センター長は物質分子 科学研究領域・電子構造研究部門の横山利彦教授が併任で務め,現在の専任教授・准教授は,平本昌宏教授,鈴木敏 泰准教授,永田央准教授,櫻井英博准教授の4名である。
共同研究支援に関しては,分子科学研究所が,平成19年度から文部科学省・先端研究施設共用イノベーション創 出事業の一環であるナノテクノロジー・ネットワークプロジェクト,平成24年度から文部科学省・ナノテクノロジー プラットフォームプログラムを受託し,ナノセンターが業務としてこれを運営している。ナノネットとナノプラット フォームの内容や成果に関しては 5-5,5-6 に記述する。
センター運営委員会は,センター長を委員長とし,専任教授・准教授全員,センター以外の教授・准教授若干名(併 任のセンター教員を含む)ならびに外部委員からなる。平成24年度の外部委員は,馬場嘉信名古屋大学大学院工学 研究科教授,花方信孝物質・材料研究機構ナノテクノロジー融合ステーション長,中嶋直敏九州大学大学院工学研究 院教授,朝倉哲郎東京農工大工学研究院教授,木川隆則理化学研究所横浜研究所生命分子システム基盤研究領域副領 域長であった。主として,ナノテクノロジープラットフォームの運営や超高磁場 N M R に関する現状と将来に関して 評価や提言をいただいている。
超高磁場 N M R は平成18年度まで実施されていたナノサイエンス支援において設置された。溶液から固体試料の ナノ構造精密研究を実現する世界最高レベルの装置である。本機の機能を縦横に活用して,タンパク(中でも膜タン パク糖タンパクのような難結晶性複合タンパク),固体ナノ触媒,有機−無機複合コンポジット,C N T及びフラーレ ン類縁体の精密構造研究,海洋性巨大天然分子などのナノサイズ分子構造体の高次構造や動的挙動の精密解析などに 対して,ナノネットを通して共同利用に供されている。所内でも,岡崎統合バイオサイエンスセンターの加藤晃一教 授のグループが精力的に本装置を活用したタンパク質構造解析研究を遂行しており,さらに,岡崎統合バイオサイエ ンスセンターの桑島邦博教授のグループもパワーユーザーであり,所内外とも充実した先端利用がなされている。ま た,安定な共同利用運用に加えて,新たに西村准教授が温度可変固体プローブを開発し,共同利用供与を始めた。さ らに,平成23年度から,東日本大震災復興支援の一環として,東京農工大の朝倉哲郎教授の高速 MA S プローブ開発
(本来は N I M S にて行う予定であった研究)を行っている。一方,920M H z. N M R と同じ環境で作動する予備装置とし て 600M H z 溶液固体 N M R 装置が機器センターにより公開されている。これにより 920M H z. N M R がさらに有効に利 用できるようになった。
分子科学研究所の組織改編によって,平成24年度をもってナノセンターは廃止され,発展的に協奏分子システム 研究センターに改組となり,共同利用機器は機器センターが統合的に管理運用することとなった。共同利用は基本的 に停止することなく支援に供せられることとなる。
8-3 分子制御レーザー開発研究センター
8-3-1 経緯と現状,将来構想
分子制御レーザー開発研究センター(以後「レーザーセンター」)は,旧機器センターからの改組拡充によって平 成9年4月に設立された。以降,平成18年度までの10年間,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー 開発研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用 機器,小型貸出機器を維持管理し,利用者の便に供してきた。各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,また セ ン タ ー 共 通 の 技 術 支 援 は 技 術 課 の 3 名 の 技 術 職 員 が 行 っ て き た。 放 射 光 同 期 レ ー ザ ー 開 発 研 究 部 は, 分 子 研 U V S O R との同期実験に向けた基礎的レーザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラ ヘルツ光源の開発などの成果を挙げた。特殊波長レーザー開発研究部は,分子科学の新たな展開を可能とする波長の 可変な特殊波長(特に赤外域)レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発を行い,産業界からも注 目される成果を挙げてきた。分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間的特性を制御したレーザー の開発と反応制御実験を目的として設置され活動を行った。
平成18年度には分子研の研究系・施設の組織改編へ向けた議論が行われたが,この中で,レーザーセンターのあり方 に強く関連する事柄は以下の2点であった。第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質との相互作用 に基づく分子科学を展開する研究領域として新たに光分子科学研究領域が設けられることになった。従来はこの研究領 域の研究が,主に分子構造,電子構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設とレーザーセンターとに別々 に所属する研究グループによって行われてきた。しかし,この組織形態は,多くの共通した概念や方法論を基本とする 研究グループを縦割りに分断し,研究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論を阻害する要因となっていた。 一方,レーザー光源を用いた研究グループは,17年度から始まった「エクストリーム・フォトニクス」のプログラムに より,既に当時,組織横断的なつながりを持つ機会が増えていた。そこで,この新研究領域を創設することにより,放射 光関連の研究グループとの間の壁も取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化することを目指したの である。第二の点は機器センターの再設置であった。本研究所には以前,同センターが設置されていたが,その後,極 低温センターと化学試料室と共に廃止され,レーザーセンターと分子物質開発研究センターが設置され,後者は更に分 子スケールナノサイエンスセンターへと改組された。しかし,共通機器を一括して管理運営し,所内外の研究者の共同 利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置されることとなった。これに伴って,レーザーセンターが 管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管されることになった。
この措置により,レーザーセンターは従来の共同利用に関する業務を大幅に圧縮することができ,センターとして の活動の重点を開発研究に移すことが可能となった。そこで改組後のレーザーセンターでは,光分子科学研究領域の 研究グループと密接な連携をとりながら,分子研におけるレーザー関連光分子科学の開発研究の中心として機能する ことを重要なミッションと考えることとなった。ただし,光分子科学研究領域の研究グループとレーザーセンターの 役割の違いを認識しておく必要がある。光分子科学研究領域の各研究グループではそれぞれの興味のもとで光分子科 学の研究分野を開拓し,先端的研究を展開するのに対して,レーザーセンターのミッションは,光分子科学の先端的 研究とその将来的な発展に必要な,光源を含む装置,方法論の開発,及びそれらの技術の蓄積に重点がおかれるべき である。光分子科学研究領域とレーザーセンターのインタープレイにより生まれた技術や方法論を蓄積するだけでは なく,開発された手法,装置や部品を所内外に提供・共同利用に供する点で,研究領域における各グループの研究活 動との差が存在する。
ただし,技術や方法論の開発段階においては,各グループの研究活動とレーザーセンターの活動を明瞭に区別する
ことは,しばしば困難である。従って,レーザーセンターと研究グループの人的な相互乗り入れは不可欠であり,平 成19年度の組織再編に際しては,光分子科学研究領域及び UV S OR に属する数名の教授・准教授がレーザーセンター に併任する形で運営することとなった。このような組織で,光分子科学の新分野を切り拓くための装置,方法論の開 発と技術蓄積を行う開発研究施設という位置づけで,レーザーセンターを運営している。開発された装置や方法論の 技術的蓄積も既に始まっており,今後,所内外の分子科学者との先端的な共同研究を遂行するためのリソースとして 提供することが望まれる。
これまでの所内,特にレーザーセンター内と光分子科学研究領域内における議論,及び所外委員を含むセンター運 営委員会等の席において,レーザーセンターの機能・ミッションに関しても議論を重ねてきた。そこでの意見として, 高いポテンシャルを持つ部門間の有機的な繋がりを考え,高い視点から見た共有点や一致点(例えば光による時間・ 空間を分解する研究手法)を探ること,レーザーを使って新しい実験的方法論を作って行くことが必要ではないか, という議論があった。またそれに向けて,レーザーセンターを光分子科学に関わる研究者が幅広く議論を行う場とし て有効活用することが必要との意見もあった。前者はまさに数年前の組織再編時に掲げた理想に沿うものであり,そ れに向けてレーザーセンターを議論の場として有効活用して行く必要があると考えている。エクストリーム・フォト ニクスの活動としての所内セミナーの開催時に,そのような機会を持つことを,前年度より試行している。
平成24年度現在,レーザーセンターは以下の3つの研究部門より成り立っている。
(1). 先端レーザー開発研究部門;平等拓範准教授(専任),藤.貴夫准教授(専任),加藤政博教授(UV SOR より併任) (2). 超高速コヒーレント制御研究部門;大森賢治教授(光分子科学研究領域より併任)
(3). 極限精密光計測研究部門;岡本裕巳教授,大島康裕教授(以上,光分子科学研究領域より併任)
それぞれの部門の任務は,(1) テラヘルツから軟X線にいたる先端光源の開発;(2) 主に高出力超短パルスレーザーを 用いた量子制御法の開発;(3) 高空間分解および高エネルギー分解分光法の開発などである。レーザー光源の開発か ら新たなスペクトロスコピー,マイクロスコピー,制御法に至る統合的な研究手法を開発することを目的としている。 これらの開発研究により,他に類を見ない装置や方法論を創出して分子科学研究の重要な柱として寄与し,分子科学 研究所とコミュニティの新たな共同利用の機会を開拓することが求められる。また,技術職員が積極的にこれらの研 究開発に参加することによって,新たに開発された装置や方法論をセンターに蓄積し,継承していくための原動力と して活躍する事が,センターのミッションに照らして重要な点である。センターが保有する光計測に関する汎用の小 型装置と技術については,一部を所内で共用することを試行している。その意味で,現在1名しか配置されていない 技術職員ポストが増員されることが強く望まれる。
一方,先端レーザー開発研究部門への加藤教授(U V S O R 所属)の参加は,レーザーセンターと U V S O R . との連携 による新しい研究分野の創出を目指すものである。平成22年度からは実際に,レーザーセンターと U V S O R の現場 の研究者・技術職員が,レーザーと相対論的電子ビームを組み合わせたコヒーレント放射光源の開発に関して議論を 重ね,実験に取りかかっている。今後,先鋭化するレーザー光源を用いた観測制御技術と放射光を用いた研究との連 携がさらに進むことが期待され,それにより光分子科学の新たな領域を創出する正のフィードバックも加速されるで あろう。この延長線上には,将来的に,放射光とレーザーの技術を総合した大規模な新規の研究施設を建設する構想 も持っておく価値はあろう。国内外の類似の施設建設の動きを考慮すると,分子研において取り組むとすれば,レー ザーに線形加速器を組み合わせたコヒーレント光源の建設が考えられる。想定される利用実験に関する十分な議論も 尽くす必要があろう。先端的なレーザー光源をセンターで保有し,その利用研究を複数のグループが行うというセン ターの形態も状況によっては考えられる。しかし現在の分子科学における先端的なレーザー実験は,多くの場合,そ
れぞれの研究目的に適した小型レーザーが用いられており,一つの大型のレーザーを共同で利用するという利用形態 が一般的ではない。このような利用形態を取るとすれば,どのような仕様とし,どのような利用実験が可能であるかを, コミュニティを巻き込んで十分議論する必要があり,このような方向を想定すべきかどうかは今後の検討課題である。 これらの構想を含め将来的には,レーザーセンターと UV S OR .を包括した研究センターの設立も視野に入れた検討を, 行う必要があると考えている。
8-3-2 共同研究の状況
平成24年度は,下記のような共同研究とその成果があった。
1).「高出力レーザー新材料の基礎研究」
高輝度光発生を目的として,物質・材料の微細な秩序領域であるマイクロドメインをマクロな領域で構造制御する 手法の探索を行っている。コンポン研・豊田中研との共同研究として,当研究室で製作した異方性レーザーセラミッ クスの解析を行った。その結果,マイクロドメインの方位に統計的な揺らぎがあることを確認した。これらの測定結 果を記述できる希土類 4f 電子のスピン・軌道角運動量を考慮した磁場による系の異方性制御に関し,新たなモデル の構築を試みており,高出力レーザー新材料に向けた共同研究を深化させつつある。これにかかる研究成果は,近く 複数の論文として投稿される予定である。
2).「遠・中赤外超広帯域コヒーレント光の時間領域測定」
フィラメンテーションを使った波長変換によって,7. f s 程度の単一サイクル中赤外光パルスが発生された。単一サ イクルパルスは,キャリア・エンベロープ位相も含めて評価することが重要である。香川大学の鶴町准教授と協力して, テラヘルツ波を計測する手法を応用した新しい超短光パルスの評価法の開発を進めている。研究成果の一部は国際会 議で発表し,論文として出版された。
8-4 機器センター
機器センターは,汎用機器の維持・管理・運用と,所内外の施設利用者への技術支援を主な業務としている。この他, 研究所内外の共同利用者と協力して,機器センターの機器を利用した特色ある測定装置の開発とその共同利用も行っ ている。機器センターでは,化学分析機器,構造解析機器,物性測定機器,分光計測機器,および液体窒素・ヘリウ ム等の寒剤供給装置等の多様な機器の維持・管理を行っている。また,機器センター所有の多くの機器を大学連携研 究設備ネットワークに公開しつつ,この事業の実務を担当している。機器センターには,センター長(併任)のほか に9名の専任技術職員と2名の事務支援員が配置されている。
分子研の明大寺地区では平成21〜22年度に実験棟の改修が行われ,平成23年3月の工事終了後,その他の建物 も含めて全面的な部屋割りの見直しが行われた。機器センターでも装置の配置を抜本的に見直し,極低温棟・レーザー センター棟1階・実験棟地下・南実験棟への集約化を図った。特に,南実験棟 S 101 号室には,主に分光計測関係装 置を集中して配置した。さらに南実験棟には所外利用者のための待合スペースも整備した。
平成23年11月には,明大寺地区のヘリウム液化装置の新規設置が行われた。以来,順調に稼働しており,ようや くにして余裕のあるヘリウム供給体制が整備された。ただし,今般の世界的な供給ひっ迫に伴ってヘリウムの新規購 入が極めて困難になっていることから,利用後の回収を徹底させることが必要である。また,昨年度末に特別な予算 的措置をもって,有機微量元素分析装置の新規交換,S QUID 極低磁場オプションならびに E S R .C W -E ND OR オプショ ン導入等を行った。
機器センターは,共同利用として前期・後期に分けて年二回の施設利用を受け付けている。平成24年度の所外施 設利用件数は平成25年2月末現在で 95 件である。平成22年度は 60 件,23年度は 81 件であったので,増加傾向に あることがわかる。
研究所全体として大規模装置を効率的に運用する必要性の高まりを受けて,機器センターにおいて,比較的汎用性 の高い装置群を集中的かつ経常的に管理することとなった。その一環として,平成23年度末に終了した「ナノテク ノロジーネットワーク事業」で運営されてきた 920.MHz.NMR および高分解能電子顕微鏡,さらに,X線光電子分光器, 集束イオンビーム加工装置,走査型電子顕微鏡の計5装置が,機器センターに移管された。「ナノテクノロジーネッ トワーク事業」に関しては,その発展である「ナノテクノロジープラットフォーム事業」が平成24年7月より開始 された。分子研において当事業を運営する母体は分子スケールナノサイエンスセンターであり,その中に設置された
「ナノプラットフォーム室」が実務を担当している。来年度にはナノサイエンスセンターが改組されるのを受けて, ナノプラットフォーム室は機器センターに移設されて業務を継続する予定である。
以上の状況に対応して,研究所外のコミュニティの方々から広くご意見を頂く必要性がますます増加するものと考 え,機器センターの運営委員会が現在までは所内委員のみで構成されていたものを,所外委員も含めた構成に変更し た。当会議では,施設利用の審査を行うほか,施設利用の在り方やセンターの将来計画について,所内外の意見を集 約しつつ方向性を定める。
機器センターの今後であるが,国家全体の厳しい財務状況を考慮すると,汎用機器の配置や利用を明確な戦略のも とに進めることが不可欠となるのは言をまたない。実際,現在の所有機器の多くが10年以上前に導入されたもので 老朽化が進み,かなり高額の修理を頻繁に実施せざるを得ない状況になっている。全てを同時に更新することは予算 的な制約からほぼ不可能であり,緊急性・使用頻度を考慮して順次更新を進めるプランを策定して,分子研全体の設 備マスタープランへ組み込む必要がある。この点で,どのような機器ラインアップを維持するか再検討すべきであり, 機器の利用形態を考慮すると,次の3つのタイプに階層化することが有用と思われる。
1).比較的多数のグループ(特に研究所内)が研究を遂行していく上で不可欠な共通基盤的機器。これらの維持は,特 に人事流動の活発な分子研において各グループが類似の装置をそれぞれ新たに用意する必要がない環境作りの面 で,最重要である。所内利用者には利便性を図りつつ相応の維持費負担をお願いする必要がある。また,オペレーター として,技術職員ばかりでなく技術支援員等で対応することも検討する。一方,使用頻度や維持経費の点で負担が 大きいと判断されたものは見直しの対象とし,所内特定グループや他機関へも含めた移設などにより有効に利用し てもらうことも検討すべきである。
2).当機器センターとしての特色ある測定機器。汎用機器をベースとしつつ改良を加えることによってオリジナル性の 高いシステムを開発し,それを共同利用に供する取り組みを強化すべきである。その際,技術職員が積極的に関与 して技術力を高めることが重要である。所外の研究者の要請・提案を取り込みつつ連携して進めるとともに,所内 研究者の積極的な関与も求める。当センター内のみならず,例えば,U V S O R やレーザーセンター等と共同して取 り組むことも効果的と考えられる。所内技術職員の連携協力が技術を支えるのに不可欠である。コミュニティ全体 から提案を求める体制づくりも必要となろう。また,各種プロジェクトに適当な装置の時間貸しをすることによっ て維持費の一部を捻出するなどの工夫も必要であろう。
3).国際的な水準での先端的機器。分子科学の発展・深化を強力に推進する研究拠点としての分子研の役割を体現する 施設として,U V S O R や計算科学研究センターと同様に,機器センターも機能する必要がある。高磁場 N M R 装置 や E S R 装置は,国際的な競争力を有する先端的機器群であり,研究所全体として明確に位置付けを行い,利用・運 営体制を整備することによって,このミッションに対応すべきである。国外からの利用にも対応するため,技術職 員には国際性が求められる。2) と同様に,所外コミュニティからの要請・提案と,所内研究者の積極的関与が不可 欠である。特に,新規ユーザーの開拓は,分子科学の新領域形成へと繋がると期待されるものであり,これまで分 子研との繋がりがあまり深くはなかった研究者層・学協会との積極的な連携を模索することにも取り組む。先端的 機器は不断の性能更新が宿命であるが,全ての面でトップたることは不可能であるので,意識して差別化を行い, 分子研ならではの機器集合体を構成することに留意する。
8-5 装置開発室
装置開発室は,分子科学分野の研究者と協力し最先端の研究に必要となる装置や技術を開発すること,日常の実験 研究において必要となる装置や部品類の設計・製作に迅速に対応する,という二つの役割を担っている。製作依頼件 数は年間 300 件近くに及ぶ。新しい装置の開発では技術職員が研究者と密接に連携し,また,日常の実験研究で必要 となる工作依頼などについては,機械加工技能を持つ技術支援員が中心となり,対応している。
分子研外部からの製作・開発依頼を受け入れる「施設利用」を平成17年度より分子研の共同利用の一環として開 始し,年間 10 件程度を受け入れている。これを本格的に運用するにあたって,受入れ方式を見直し,分子科学の発 展への寄与,装置開発室の技術力向上への寄与,装置開発室の保有する技術の特徴を活かせること,の3点を考慮し, 受入れに関する審査を行っている。
装置開発室は大きく機械工作を担当するメカトロニクスセクションと電子回路工作を担当するエレクトロニクスセ クションに分かれている。メカトロニクスセクションでは従来の機械加工技術の超精密化に向けた取り組みに加え, 近年では,フォトリソグラフィなど非機械加工による超微細加工技術の習得に取り組んでいる。エレクトロニクスセ クションでは,高速化や多機能化が進む電子回路の需要にこたえるために,プログラマブル論理回路素子を用いたカ スタム IC の開発,東京大学大規模集積システム設計教育センター(V D E C )を利用したアナログ集積回路の開発技術 の導入に取り組んでいる。
装置開発室の業務の基盤である依頼業務,すなわち,分子研内外からの装置の製作や開発の依頼に応える業務に加 えて,装置開発室職員が技術力向上を目指して自主的に技術開発を行うような取り組みを「将来技術開発プロジェク ト」と位置付け,研究の現場における需要を意識しつつ,装置開発室で保有する技術をさらに伸ばす仕組みとして展 開していきたいと考えている。
装置開発室の設備については,創設から30年が経過し,老朽化,性能不足,精度低下などが進み,設備の更新は 急務となっている。今後,装置開発室の将来計画・将来像の検討を進めながら,その方向性を強く意識しつつ,日常 の実験研究を支えるための基盤的設備,先端技術習得のための先進設備,双方の更新・導入を進める。また,他機関 の保有する設備の利用も積極的に検討する。これまでの利用経験から,利用申請などの手続きに時間がかかるなどの 問題も明らかになってきており,効果的な利用・活用の方法を調査・検討する。
8-6 計算科学研究センター
計算科学研究センターは,2000年度の電子計算機センターから計算科学研究センターへの組織改組にともない, 従来の共同利用に加えて,理論,方法論の開発等の研究以外に,研究の場の提供,ネットワーク業務の支援,人材育 成等の新たな業務に取り組んでいる。2012年度においても,次世代スーパーコンピュータプロジェクト支援,ネッ トワーク管理室支援等をはじめとした様々な活動を展開している。上記プロジェクトについてはそれぞれの項に詳し く,ここでは共同利用に関する活動を中心に,特に設備の運用等について記す。
2013年3月現在の共同利用サービスを行っている計算機システムの概要を示す。本システムは,「超高速分子シ ミュレータ」と「高性能分子シミュレータ」から構成されている。前者は2012年2月に更新され,後者は2013年 3月に更新された。両シミュレータは,いずれも量子化学,分子シミュレーション,固体電子論などの共同利用の多 様な計算要求に応えうるための汎用性があるばかりでなく,ユーザーサイドの P C クラスタでは不可能な大規模計算 を実行できる性能を有する。
超高速分子シミュレータは富士通社製の PR IM E R G Y . R X 300S 7 と S G I 社製の U V 1000 から構成される共有メモリ型 スカラ計算機で,両サーバは同一体系の C PU(Intel. X eon)および OS (L i nux2.6)をもとに,バイナリ互換性を保っ て一体的に運用される。これらに加え,京コンピュータと同じアーキテクチャの富士通社製 PR IME HPC .F X 10 があり, システム全体として総演算性能 188.7. T flops で総メモリ容量 55. T B yte 超である。PR IME R GY . R X 300S 7 は,16. C PU コ ア /128. G B 構成のノード 342 台からなる PC クラスタである。インターコネクトは Infi ni B and. QD R を採用し,全台数 を 40. G B /s で,一部は2系統の 80. G B /s で演算ノード間を相互接続しており,大規模な分子動力学計算などノードを またがる並列ジョブを高速で実行することができる。特徴は,v S M P の導入により複数ノードを仮想的に 1 ノードの 巨大共有メモリシステムとして運用できることである。しかも,ジョブ毎にこの制御が可能である。また 32 ノード には,NV ID IA社製の G PG PU. T eslaM2090 を搭載している。U V 2000 は 1024. C PU コア /8. T B を有する NU MA型の共 有メモリシステムであり,ジョブ作業領域用に実効容量 400. T B および総理論読み出し性能 12. G B /s を有する高速磁 気ディスク装置が装備され,大規模で高精度な量子化学計算を可能とする。この2サーバで 1000. T B の容量の外部磁 気ディスクを共有し,NF S より高速なパラレル NF S が使用できる。PR IME HPC .F X 10 は,16C PU コア /32GB の 96 ノー ドが富士通独自の T ofu インターコネクトで連結されたシステムである。京コンピュータと互換性があり,京コンピュー タのプログラム開発やデータ解析等への活用が期待される。
高性能分子シミュレータは,演算サーバ,ファイルサーバ,フロントエンドサーバ,運用管理クラスタおよびネッ トワーク装置から構成される。演算サーバは,富士通製の PR IME R GY .C X 250S 1 で,16.C PU コア /64.GB yte 構成のノー ド 368 台からなる共有メモリ型スカラ計算機の PC クラスタである。理論総演算性能は 136.6. T flops,総メモリ容量は 23. T B yte である。インターコネクトは InfiniB and. F D R を採用し,全台数を 56. G B /s で相互接続しており,大規模な分 子動力学計算などノードをまたがる並列ジョブを高速で実行することができる。ファイルサーバは,1800.T B yte のディ スクを装備しており,演算サーバのインターコネクトに直結している。本ディスクは演算サーバのワークディレクト リとしてだけでなく,共同利用システム全体のホームディレクトリやバックアップ領域として運用している。本演算 サ ー バ は, 2014 年 9 月 に 次 世 代 C P U を 有 す る P C ク ラ ス タ に 入 れ 換 え る こ と に な っ て お り, そ の 時 点 で は 220. T flops 以上に増強される。
ハードウェアに加え,利用者が分子科学の計算をすぐに始められるようにソフトウェアについても整備を行ってい る。量子化学分野においては,G aussi an. 09,G amess,M ol pro,M ol cas,T urbomol e,分子動力学分野では,A mber, NA MD ,Gromacs がインストールされている。これらを使った計算は全体の約半数を占めている。さらに,量子化学デー
タベース研究会の活動を支援し,同会から提供された量子化学文献データベースをホームページから検索できるよう にしている。これまでに合計 118,989 件のデータが収録され,世界 91 カ国から利用されている。
共同利用に関しては,2012年度は 190 研究グループにより,総数 697 名にもおよぶ利用者がこれらのシステムを 日常的に利用している。近年,共同利用における利用者数が増加傾向にあり,このことは,計算科学研究センターが 分子科学分野や物性科学分野において極めて重要な役割を担っており,特色のある計算機資源とソフトウエアを提供 していることを示している。
昨年度より,革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(H P C I)戦略プログラムが開始された。 こ の 中 で,H P C I 戦 略 分 野 2「 新 物 質・ エ ネ ル ギ ー 創 成 」 計 算 物 質 科 学 イ ニ シ ア テ ィ ブ(C M S I :. C omputati onal. Materials. S cience. Initiative)が物性科学分野,分子科学分野,材料科学分野により構成され,C MS I の戦略機関の一つ として分子科学研究所が参加し戦略プログラムを推進している。HPC I 事業の中で,計算科学研究センターは HPC I の 資源提供機関の一つとして HPC I 戦略プログラムに参加し,一昨年度よりコンピュータ資源の一部(20% 未満)を提供・ 協力している(9課題,75 名)。さらに,ハード・ソフトでの協力以外にも,分野振興および人材育成に関して,スー パーコンピュータワークショップ「理論と計算科学による新たな展開と可能性を探る」と2つのウィンタースクール
「第2回量子化学ウインタースクール〜基礎理論と生体系の理論〜」と「第6回分子シミュレーションスクール〜基 礎から応用まで〜」を開催した。
平成24年度 システム構成(2013 年 3 月以降) 超高速分子シミュレータシステム
クラスタ演算サーバ
型番:富士通.PR IME R GY .R X 300S 7 OS:L inux
C PUC ore 数:5472(16C PUC ore× 342 ノード)
総理論性能:126.9.T flops(371.2.Gflops× 342 ノード)+21.2.T flops(T eslaM2090.x32) 総メモリ容量:43.7.T B (128.GB × 342 ノード)
高速 I/O 演算サーバ 型番:S GI.UV 2000 OS:L inux C PUC ore 数:1024
総理論性能:20.4.T flops(20.0.Gflops/C PUC ore) 総メモリ容量:8.0.T B
ディスク容量:400.T B (/work)
「京」用開発サーバ
型番:富士通.PR IME HPC .F X 10 OS:L inux
C PUC ore 数:1536(16C PUC ore× 96 ノード) 総理論性能:20.2.T flops(13.2.Gflops/C PUC ore) 総メモリ容量:3.0.T B (32.GB × 96 ノード) ディスク容量:48.T B (/k/home)
外部磁気ディスク装置
型番:PA NA S A S .PA S 12,PA S 11 総ディスク容量:1000.T B 高速ネットワーク装置
型番:F orce10.Z 9000
高性能分子シミュレータシステム 演算サーバ
型番:富士通 PR IME R GY .C X 250S 1 OS:L inux
C PUC ore 数:5888(16C PUC ore× 368 ノード) 総理論性能:136.6.T flops(371.2.Gflops× 368 ノード) 総メモリ容量:23.5.T B (64.GB × 368 ノード) ファイルサーバ
型番:富士通 PR IME R GY .R X 300S 7(8 ノード) OS:L inux
総メモリ容量:320.GB (64.GB × 2 ノード+ 32.GB ×6 ノード)
ディスク容量:1800.T B (/home(300.T B ),/save(600.T B ),/week(300.T B ),バックアップ領域(600.T B )) フロントエンドサーバ
型番:富士通 PR IME R GY .R X 300S 7(4 ノード) OS:L inux
総メモリ容量:256.GB (64.GB × 4 ノード) 運用管理クラスタ
型番:富士通 PR IME R GY .R X 200S 7(16 ノード) OS:L inux
総メモリ容量:512.GB (32.GB × 16 ノード) 高速ネットワーク装置
型番:F orce10.S 4810
8-7 岡崎統合バイオサイエンスセンター
岡崎統合バイオサイエンスセンターは,岡崎3機関(基礎生物学研究所,生理学研究所,分子科学研究所)と連携し, 新たなバイオサイエンスを切り開くことを目的として設置された岡崎共通研究施設であり,三つの研究領域(時系列 生命現象研究領域,戦略的方法論研究領域,生命環境研究領域)から構成されている。岡崎統合バイオサイエンスセ ンターに所属する専任教員は,基礎生物学研究所,生理学研究所,分子科学研究所,いずれかの研究所の教員を兼務 している。現在,分子科学研究所教員を兼務している教員は,青野重利教授,加藤晃一教授,桑島邦博教授,藤井浩 准教授の4名である。
岡崎統合バイオサイエンスセンターでは,平成22年度から「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」,「生命 機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」の2つの研究プロジェクトを推進している。
(1) 「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」においては,環境分子による生理機能撹乱の本質を明らかにし, 環境分子が生物へ及ぼす影響の定量予測法の確立,環境分子による生物への悪影響の低減策確立のための科学的基 盤の確立を目的として,下記のようなサブテーマを設定して研究を実施している。
1). 環境分子の受容・応答機構研究
2). 環境分子による生理機能撹乱の統合的研究 3). 生殖細胞分化機構研究
4). 細胞のストレス応答・ストレス防御機構研究 5). 生体分子による正常生理機能制御の統合的研究 6). 環境分子の生物影響に関する統合的データベース構築
(2) 「生命機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」においては,高次生命現象を生命機 能分子の構造的側面にまで掘り下げて理解することにより,生命システムの全体像を解き明かすことを目的として, 下記のようなサブテーマを設定して研究を実施している。
1). 生命現象の機能解析(特に神経回路網形成や視覚の解析)
2). 生命機能分子の網羅的探索(特に発生・神経回路網形成に関わる蛋白質の遺伝子レベルでの解析)
3). 生命機能分子の構造・機能解析(網羅的探索で明らかにされた蛋白質(大部分は天然変性蛋白質)のうち, 高次生命現象にとって重要なもの,および,チャネル蛋白質やセンサー蛋白質などの膜蛋白質を対象とする) 4). 高次生命システムと生命機能分子の計算機シミュレーション
5). 上記の研究を進めるための方法論・装置開発
また,平成24年度には,本事業のテーマに関連し,「温度生物学:植物からヒトまで」をテーマとし,主に若手 研究者を対象としたサマースクールを実施した。